2019年の総括&オススメ小説

2019年もいよいよ終わりですねえ。くっそ早え!
俺らは少し前に生まれてきて、まもなく死ぬ!(©中島義道
ということで(?)今年も1年の総括的なエントリをお届けさせてくださいませ。

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昨年末、2018年は僕にとって《再起》の年だったと書きましたが、今年のテーマ(ないし目標)は《持続》でした。それは半分成功し、半分失敗しました。というのも、活動的であれたのは前半のみで、後半はほぼ何もできなかったからです。

家族の事情(特に祖母の死)、僕自身の身体的不調(生活習慣によるもの、高校時代の古傷が原因のもの)、仕事の忙しさとストレス──まあ色々ありましたが、それはもう人生そういうものということで、来年も当然いろいろあるでしょう。コンスタントな活動が年々難しくなってゆく中、どういうやり方を見出してゆくのか! が今後の課題ですねー。

マイ・ファニー・バレンタイン

マイ・ファニー・バレンタイン

  • 作者:晋太郎
  • 出版社/メーカー: SLEEPING BAG
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Kindle
 

ともあれ、まあ、今年は3冊のリリースができたわけですよ!(半分の成功!)
その第1弾となった『マイ・ファニー・バレンタイン』は昨年に書いたものなので、もはや遠い記憶となっておりますが、実にサラッとやったよなーという印象。

次に出すのはまたこういう短編集がいいな、まとまった時間の確保が難しいときにはとにかく短編だな、持続という意味では短編を上手く活かしてやってゆくしかないな……みたいな感じで、今後の僕にとって「短編」はひとつの鍵となるような気がしております。こういう等身大の他愛もない作品がいっぱいあるのってけっこう大事でしょ、とも思いますし。

なお、今作でいちばんのお気に入りは『スメルズ・ライク』なのですが、一番人気は『クロス・ザ・ルビコン』でした。ああいうアホな会話劇は何も考えずにできるというか、おそらくはもともと得意な路線だと思うので、今後もちょろちょろやってゆこうかなと……。

例によってプレイリストも作りました。もしかしたら前にも書いたかもしれませんが、今作(&『晴れでも雨でも』)に登場するクラブはかつて渋谷にあったSimoonという中箱のイメージがもとになっています。

イン・ザ・ドッグハウス

イン・ザ・ドッグハウス

  • 作者:晋太郎
  • 出版社/メーカー: SLEEPING BAG
  • 発売日: 2019/08/03
  • メディア: Kindle
 

今年はこの作品をリリースできたことが何より大きかったです!『フィッシュ〜』で新たに開拓した路線をひとつの軸にできそうだな、と感じられたというか。

自分の「過去」を鮮やかに彩色するのが僕のメインの作風だったと思うのですが、「今」の自分の生活や感覚をベースに物語を作る、というやり方も今後は無理なくやってゆける気がしました。自分との距離が近いぶん容易に美化はできない、でもある種の小説的なフィルターを通して露悪的にならないよう成形することはできる、といった塩梅で。

なので、大人のための(あるいは大人になりきれない大人のための)「今」を描いたお話の割合が自然と増えてゆく……のかなあ。どうかなあ。わからんなあ。

何にせよ、"犬小屋" こと、この『イン・ザ・ドッグハウス』は僕にとって特別な一本となりました。出来・不出来はともかく、ある種の力がある作品だと自負しております。

ザ・ナショナルにガッツリやられたのは "Bloodbuzz Ohio" だったので、もうあれから10年が経っちゃうのかーと。フランク・オーシャンの『Channel Orange』も2012年ですし、俺らは少し前に生まれてきて、まもなく死ぬわけです。この「まもなく死ぬ」という感覚は若い頃からありまして、犬小屋ではそれを前面に出しましたけども、過去の作品たちにも割と滲んでいることかと思います。

Copy, Right?

Copy, Right?

  • 作者:晋太郎
  • 出版社/メーカー: SLEEPING BAG
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Kindle
 

こちらは "犬小屋" にのめり込んでバランスを崩さないように書いていた、いわゆる【青春のきらめき】系の一本。「何てことのない話」というのが僕自身の評価ですが、僕のメインの路線として、書ける限りは、そして書きたいことが浮かぶ限りは続けたいと思っています。何というか、若い読者さんたちのためにも。

ただ、同じことを同じように繰り返し書いても意味がない、というか僕が飽きてしまうので、ちょっとずつ「新しい領域」に踏み込んでゆきたいなーと。【同じことを繰り返し書くこと】自体はまったく問題ないというか、それでいいとすら今は思ってるんですけどね!

そういえば、この本をリリースする直前に元彼から唐突に電話がかかってきて、うーんシンクロニシティ……となりました。色んな話をして、知らないままでいたいくつかのことを知って、現実の方がよっぽど作り話っぽいよなとしみじみ感じたり。

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)

 

ところで、作中で基くんが読んでいるSF小説はコレです。ちょうど1年前、年末年始の休みにブワーッとまとめて読んだんですけど、長大なシリーズを一気に読めるのはこういう休みぐらいだと思うので皆さんもいかがでしょう。いや、僕の小説を全部読むというテもあると思うんですけどね!(姑息)

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そんなわけで、今年の僕の活動はおおむねこんなもんでした。まったく満足できるものではありませんが、無駄に自分を責めるのもやめような!とも思っています。
なお、昨年同様、小説ではない書き仕事もやらせていただいたので、お知らせできるタイミングが訪れた際にはまた告知をさせてくださいませー!

僕の作品を読んでくださった皆さん、応援してくださった皆さん、今年も本当にありがとうございました!今以上のペースでの活動はなかなか難しいかもしれませんし、動けないときはとにかく動けねえ!という事実を受け入れてやってこうと思っておりますが、できる限り、体を壊さない程度に楽しく頑張ってゆきますので、来年もどうか応援していただけましたらめちゃめちゃ嬉しいです。

 

……と、このまま終わるのも面白くないので、以下、今年のオススメ小説などをちょろちょろと簡単に紹介して終わりますね!

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

 

やー、これはもう珠玉の短編集と呼ぶほかない一冊でした。ひとりの女性の人生が詰まっているし、それらの断片がひとつひとつ物語として昇華されているさまがもう……。あー、人生ってマジでやべえよなあ、とアホみたいなことを思いましたし、自分の人生の全部を、悲惨な出来事もひっくるめて愛おしいと感じてしまいました。

これが白眉なんすよ!と特定の短編を挙げるのは難しいんですが(どれも素晴らしいし、とにかく総体に圧倒されるので)、最後の三本「さあ土曜日だ」「あとちょっとだけ」「巣に帰る」を立て続けに読んだときの感覚といったら。

僕も実体験をベースに書くことが多いですけど、彼女みたいなやり方はとてもできないですねー。でも、このまま今のスタイルを守ろうと思いました。そして、どれだけ小規模で、どれだけ個人的なものであろうと、とにかく書き続けたいなとも。書くことの凄味、書き続けることの凄味を突きつけられたような気がします。

息吹

息吹

 

ああ、『あなたの人生の物語の作者だな、俺はこの作者の抱えるテーマに共感を覚えていて、この作者のメッセージを好ましく思っているのだな、みたいなことを感じながら読みました。彼はニヒリズムに抗う姿勢を知性的に示し続けていると思います。

俺らは少し前に生まれてきて、まもなく死ぬ!としつこく書きますが、俺らの人生において唯一確実なのはそれだけで、そのことを意識から追い出すにせよ直視するにせよ、どうであれ俺らはいずれ去るわけです。そういったフレームの中で、どういう希望を見出すのか、人生というものをどう捉えるのか……というのが僕のもっぱらの関心事なのですが、テッド・チャンのスタンスは端的にめちゃめちゃ好みです。彼はもう50代ですけど、ずっと肯定的なメッセージを書き続けているのが、その生き方がすごい。

ものを書く立場から見ると、必ずしもプロット先行の書き方が悪いわけではない、ということがよーくわかるのもけっこう励まされますね。まあこんな緻密な表現はまず真似できないし、美しい奇想も俺からはめっちゃ遠いものなんですけど。でも、書き方に正解はないよなーと。

レス

レス

 

俺らにはファンタジーが、甘い話が必要なのよ!とつねづね俺は思ってまして、というか単に俺個人が強く求めてただけなんですけども、これはズバリそういう作品でした。仮に俺がこのプロットでこの長さの小説を書いたら、最後は別の場所に着地させると思います。同じ結末にするにしても、不穏な要素を取り入れるとか何かしらやっちゃうはずです、何故なら人生はそういうものだから。でも、本当はこんぐらいの書き方をしてしまいたい。何故ならフィクションにはそれが可能で、俺らにはそういったものも必要だから。でも、でも…………みたいな葛藤が俺には常にあります。なので、こういう思い切った作品を他者から差し出されると「ありがとう!」という気持ちになっちゃうんですよねえ。やー、もうシンプルに最高でした。

とはいえ、ただただそういう結末を提示されてもノれないのも事実で、この作品の場合、ペーソスとユーモアのバランスが絶妙だというのも大きいですよね。語り口が面白くて、何よりレスがチャーミングだから肩入れしたくなる、というのもある。けっこうどうしようもねえな、と思う瞬間もいっぱいあるんですけど、だからこそレスはチャーミングなのです。

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以上、オススメ小説でした!(読書家でもないくせに!)

ということで、今年も「こいつらはよく聴いたなー」という曲を適当に(適当にというのが重要です)まとめたプレイリストと、そこには加えなかった、しかしながら今年のマイ・ベストである思い出野郎Aチームの最高に最高に最高なアルバム『Share the Light』を紹介してシメたいと思います。

2019年は彼らのライブに何度も足を運んでエネルギーを貰いました。めっちゃ踊ってめっちゃ歌いました。俺の中の猿川建くんが大騒ぎしているので、モンちゃんファンの方はぜひ頭から通して聴いてみてほしいです。ほんとに!


ちくしょう、かっけえ!
最高の最高だ!俺も頑張ろう!!
どうか良いお年を!