『ナイン・ストーリーズ』あとがき全文

本日は夏の高校野球、西東京の決勝を観戦しに神宮球場まで出向きました。
拙作『ナイン・ストーリーズ -球児九人夏物語-』を書くきっかけを作った二つの高校同士の対戦ということで、個人的にはまさに夢の決勝カード。いつか決勝でこのカードが見たいなあ、というのがぼんやりとした夢だったのですが、思いのほか早く現実になってしまい、嬉しい驚きでした。やー、熱かったっす、色んな意味で。
『ナイン〜』は予選で負けたチームを描いたおはなしなので、まさにここからストーリーが始まります。

──と、色々エモく書いたんですが、一晩明けて照れくさくなってしまったのでこっそり削除!
『ナイン〜』のあとがき全文だけを残しておきたいと思います。

 高校野球の観戦が好きです。
 特に、夏の大会が好きです。それも、甲子園に至る前の地方大会に好んで出かけます。各地区でたったひとつの枠をめぐり、しのぎを削ってトーナメントを争う。あの構図が大好きです。
 一回でも負けてしまえばそこで終わり。リーグ戦と違ってトーナメント戦はシビアですよね。でも、だからこその熱量がそこにはあり、だからこそ生まれてくるドラマもあり──、そういうところがたまらなく好きです。当たり前のことですが、試合が行われるたびに必ず一方のチームが散る。決勝を戦えるのは二チームのみ。ほとんどすべてのチームが敗者になる。僕はその「負けてゆくチーム」の姿を確かめるのが好きなのだと思います。
 甲子園でのゲームは、言うなれば「勝者たちの戦い」みたいなもんです。そこで散っても、やっぱり彼らは「勝者」だよなあ、と。だから「敗者」に関心のある僕は、地方大会がいちばん好きなんです。
 ──ということでこの作品は、とある高校が地方大会で敗退し、野球部を引退するところから始まるという、高校野球モノとしてはちょっとひねくれたつくりになっています。九人の球児たちがそれぞれのやり方で高校野球の終わりと向かい合い、最後の夏を終えてゆく姿を描きました。大きなドラマなんてものもなく、ジリジリとただ夏が終わってゆくだけのおはなしです。

 高校野球には「最後の夏」だとか「夏が終わった」なんて言い回しがよく似合います。
 たぶん、僕が高校野球を好きないちばんの理由は、球児たちの夏が終わる瞬間が、その最後の輝きが、はっきりと見てとれるからなんですよね。
 夏というのは僕の中で、若さや青さ、すなわち青春時代のメタファでもある、特別な季節だったりします。目に映るものは何もかもが鮮やかで眩しく、ギラッとした太陽と熱波に身も心も焦がされ、常に喉が乾きっぱなしで、あっという間に過ぎ去ってしまう。
 最後の試合に負けた瞬間、三年生たちの夏は終わります。
 でも、季節としての夏は終わりませんし、終わってしまったはずの夏を本当の意味で終わらせるのは、なかなか大変なことだと思います。僕も、身に覚えがあります。
 それが、この作品のテーマです。随分とページを割きましたが、それだけなんですよねえ。けれど、夏を終わらせるのは大変なので仕方ないんですよ。ほんと、仕方ないんです。

 強豪とは言えないまでも、それなりの実力を持ってしまった都立校の九人の球児たち。
 それぞれの小さな世界からは決してはみ出さない、九つの小さなストーリーを作りました。たぶん、個性豊かな愛らしい奴らです。一人でもお気に入りの球児を見つけていただけたら、本当に嬉しいです。

 最後に、僕の熱烈なラブコールに快く応じ、最高のイラストを添えてくださった村田ポコさん、僕を焚きつけ、この作品を作るきっかけを作ってくださったワルダクミのスペシャリスト・加藤悠二さん、そして校正のお手伝いをしてくださった編集者の南百瀬健太郎さんに心よりのお礼を申し上げます。
 もちろん、最大の感謝は本作を手にして下さった皆さんに捧げさせて下さい。
 大変拙く、そしてひたすらに地味な作品にも拘らず、最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました!

ということで、今、このタイミングで読んでいただけたらすごく嬉しいなーという内容になっています。興味のある方は、以下よりぜひぜひどうぞ!

ナイン・ストーリース? ー球児九人夏物語ー side A

ナイン・ストーリース? ー球児九人夏物語ー side A

ナイン・ストーリース? ー球児九人夏物語ー side B

ナイン・ストーリース? ー球児九人夏物語ー side B